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障害者が65歳を迎えると、障害福祉より介護保険を優先する原則によって従来のサービスを受けられなくなる――。介護保険の利用で自己負担が生じた障害者の訴訟で、司法の判断が分かれている中で、障害のある人が日々の生活のために使っている「障害福祉サービス」。このサービスが65歳で打ち切られたことを不服とした裁判の判決が東京高等裁判所で言い渡された(2023年 3月)
訴訟および判決内容:
65歳になったことを機に千葉市に障害福祉サービスの支給を打ち切られ、介護保険サービスへの移行で自己負担が生じたのは不当だとして、脳性まひのTさん(同市・73)が処分の取り消しなどを求めた訴訟の控訴審で、東京高裁(村上正敏裁判長)は3月24日、同市の処分は違法だとして、取り消しを命じた。
判決理由:
判決は収入の比較的高い人が、低い人よりも負担軽減されることを「障害者相互の不均衡」と指摘。その不均衡を避けるため、同市は障害福祉サービスの支給を続けるべきだったと批判した。
この判決例からも、争点はサービスの支給を決める市町村の裁量をどこまで認めるかの問題が浮き彫りになっている。
Tさんが裁判を起こした理由:
「65歳の壁」と呼ばれるこの壁。障害者が65歳になると従来の障害福祉サービスから介護保険サービスへの切り変えを求められます。ただ、障害福祉サービスは社会参加の機会の確保まで含めた日常生活支援。介護保険サービスは日常生活に限って最小限の身の回りの介護をする支援です。そのため、障害福祉では必要と認められていた食事などの介助や掃除、外出支援などのサービス量が減ったり、サービスを利用する際の負担額が増えたりします。生涯を通じて収入が少ない障害者にとって負担が増えるのは死活問題です。こうした問題を巡ってTさんは裁判を起こしました。
なぜ、65歳になると障害福祉サービスが利用できなくなるのか
障害者総合支援法の第7条に65歳以上になると障害福祉サービスと対応する介護保険サービスがある場合は介護保険を優先するという規定があるからです。
ただ現実的には、厚生労働省は原則優先としつつ、「一律に介護保険サービスを優先させることなく、個々の状況に応じて支給決定がなされるようお願いする」という通達を市町村に出しており運用での解決を図っているとの事。
上記内容から自治体がうまく運用すれば障害福祉サービスも受けられるということみたいです。
実例:東京・国立市のように「介護保険は強制しない。介護保険の申請がない限り、障害福祉サービスを継続できる」と、介護保険との併用も含め障害福祉サービスを提供している自治体は増えてきています。しかし、障害福祉サービスは税金で賄われており、自治体の負担が大きいため、介護保険優先の原則を守る自治体も少なくありません。
結論:高齢障害者は65歳になっても障害年金等で所得が低いのですから負担のない障害福祉サ-ビスがどこで暮らしても、必要な支援を受けれる様にしなければなりません。
人生100年時代と言われる中、障害のあるなしに関係なく、いくつになっても、どこで暮らしても、生活の質と尊厳が守られるよう法を整備し、制度を運用していくことが求められていると考えます。