できないの不信の壁”とそれを乗り越えた実例 参考文献3,14,15)
<実例①>高齢者や認知症の方にとって最大の壁はまわりの人の見方や考え方である。これは障害者にとっても“なにもできない人”とレッテルを貼る常識を生み続け 生きる力を蝕んでいる巨大な壁となり、差別社会を生み出す元となっている。私の経験の一つを思い出す。1970年代新宿歩行者天国でビラ配りをした時のことです。これまでなにもできない「精神薄弱者」というレッテルのみで弟への偏見差別を何度も経験してきたので 「知的障害者」としての人それぞれの知的特性を知って支援してほしいと呼びかけた。ビラを受け取った人は違和感を感じたようですが、その後知的障害が障害の一つとして位置づけられ 多様な特性があると明らかにされ理解支援されるようになってきている。
言葉にすぐに発するのが不得手な人が 見つめる視線や指のさす方向やこだわりから 当事者の力を学ぶ。
支援者がお茶を出すと、自分からコップを差し出すときと大きく首を振る時とあった。以後支援者がお茶をもっと飲みますかと尋ねると、自分で決め、コップを差し出したり、首を振ったりと。自分の意思を伝えるようになった。
施設からグループホームに移った人が、同居の人とスーパーに買いもにいった。それまでは他人にあわせることで済ませていたために、買い方やお金の使い方は知っていたが、好きなものを自分で選んで買うことができなかった。棚から数種類のものを自分で選んで、カウンターでお金を払った。
・・・参考文献3)。
参考文献14)には認知症の方の実例が多く述べられている。例えば、皆家族に向かって話をする。目の前に私がいるのに。私が何か言っていいの?と。・・・。
地域包括支援センターが 高齢者・認知症の方・家族・公支援者・ボランティアの長年の努力で地域に根付いてきている。筆者山下も利用している。この制度を地域障害者にも利用拡充し、真に「包括支援」なることが必要不可欠である。両者が共通の差別構造に立ち向かって、互いに学び合え相乗効果が得られることからも。
<実例②>ハンディある人の投票権の実現 参考文献15)。
2013年に公選法が改正され、成年後見制度を利用している認知症の方・知的障害者・精神障害者にも選挙から排除されなくなりました。選挙情報のバリアフリーのために東京都狛江市の手をつなぐ親の会が「わかりやすい選挙広報誌」をつくっている。都内品川区・福島市・札幌市でも取り組んでいる。長年この活動を進めてこられた狛江市副市長平林浩一さんは、投票所へ出かける前に各自治体選管に相談すればよいと言っておられる。