(1) 実例
〇実例① 性的被害を受けた知的障害女性が刑事・検事・弁護士に日時や具体的性被害等を何度も聞かれ、再現よくうまく伝えられなかったとされ、立件できず泣き寝入り。加害者は否定し被害者は特定できず【10月30日朝日新聞:30歳未満性暴力268調査案件中127件解答 うち70件55%障害者(2017・8~2018・3)】:参考文献8)
施設・GH・福祉作業所職員や支援学校教員等の密室での性暴力事件立件の壁をなくすためにも「自己決定権支援保障」の完備は必須
〇実例② 一人住まいの知的障害者が、自治会長から班長の役割が回ってきたと伝えられ、「病気があるのでできない」と断った。 役員から「特別扱いはできない】といわれた。
当事者は【しょうがいがあります。おかねのけいさんはできません】と便箋に書かされ、
住民に見せる】と言われた。 翌日亡くなっていた。亡くなる前に兄に、【さらしものにされる】と。 兄は、【自ら書面を書くはずがない】と言っている。
〇これら二つ実例は、当事者がおかれている人権無視の典型的な現実を示しています。即ち、法支援の欠陥のため、合理的支援がない現実です。
このような知的障害者の人権無視をなくすためには「自己決定権」に関して充分にいきとどいた支援が必須である。当事者が安心居住場を自身で決定するためにも必要な支援です。
(2) ここでいう「自己決定権を保障するための支援」とは
自分のことを自身で決めることを可能にするための支援です。 即ちより詳しくは、 自己決定するには以下の三段階の心の葛藤過程があり、それに気づき当事者のペースに合わせて支援していくことである。
❶意思形成の壁=心の中が混とんとしていて、まだはっきりとせず何をするか、言う内容がみえず迷っている場合。意思の始まり・問題意識・意思確認が大事
❷意思表現の壁=心の中ははっきりとしているが、適当な言葉が見つからない場合
❸意思表示の決断・実現が壁=心の中ははっきりとしているが、相手や外に向かって言いづらい、言いにくい、遠慮がある、言えない、折り合いをつけかねている場合
これらを基に、当事者の障害の重さ・個性・希望・客観状況・自己決定場・支援者との交流、等を考慮して 自己決定権の合理的な支援を行う (各段階の具体例は拙著参照)。
この支援は知的障害者にとって非常に重要である。