全国きょうだいの会会員・北海道大学名誉教授 山下幹雄
京都市南区東九条で実家空き家を活用して 2017年暮れから 車椅子青年・留学生二人・大学名誉教授で始まった参加費無料の広場光青年学級。現在のメンバーは 前者三人に代わって 支援学校高等部卒業生20代四人・高校卒業生20代一人・大学生一人・支援学校定年退職先生二人である。学級の目的は ①自分でできることを増やす、②助け合える友達をつくる、③たがいに感謝しあうこと である。月2回土曜日に集まっている。最近は 【A英語ヒントをもとに答える英語カルタと英語の歌合唱・B自身の暮らし場と絡んでいる京都の歴史を知る・C今私の言いたいこと・D一人暮らしを念頭にみんなで分担して食材を買ってきて食事(おにぎり・味噌汁・焼きそば等)をつくる(写真1)】 を行っている。
つながりがつくれるこのような少人数青年学級が各町内にひとつでもあればと願っている。思いやりの心があれば誰でも参加できる。
ここでは “職場”と“一人暮らしに向けて” について話し合った 障害者枠で勤める五人の声を中心に紹介する。
1.職場あれこれ
A君・B君・C君3人の仕事は大学プラスでチームを組んで学内室内外のゴミ分別チェック・収集が主作業である。A君:ゴミ分別を知り良かったが給与について他会社に勤めている二人と比べて3割以上低いのを知りもっと上げてほしいと思っている。高卒資格をとったらあげてもらえますかと上司に悩んだすえ尋ねたら無理ですと言われた。B君・C君も給与については同様な意見であり、仕事は別なところを見つけたいと思っている。B君は保育士になりたいために関連の短大を見学してきた。C君はこれに付き添って行った。C君は高卒の資格を取るため通信制高校に通って3年以上頑張りあとわずかな単位を残すのみである。さらに通信制大学も考えている。歴史文化財に興味がある。
D君は医療福祉機材の商社に勤めていて、給与については現在のところ不満はない。障害の有る無しで差はない。コロナ禍で休む人があり突然残業を言われるのに困っている。上司に前もって言ってほしいと言っているがあまり守られていない。E君は最初の職場はあわず、親が紹介してくれた工務会社のダイレクトメール関連部門に勤めている。給与については現在のところ満足しているが、突然残業があるのには困っている。A・B・C君はお金の管理支援を地域支援センターから受け福祉サービスを活用している。五人は障害年金をもらっている。
2. 一人暮らしに向けて (話し合いの風景:写真2)
五人みんな親と一緒に住んでいるがいずれは一人暮らしをしたいと思っている。しかし切実感は異なる。D君・E君はできるだけ早くと、一人住まいしている人に話を聞いてアドバイスもらっている。C君も願っているが、まず給与と仕事が先だと思っている。A君とB君は親から今は無理だと言われている。二人は居住場で交流ができる少人数グループホームGHが良いと思っている。しかし我が国のGHの利用可能定員は14.2万人で全障害者数の1.5%である1)。
JCIL(日本自立生活センター)の三人 【身体に障害のあるセンター長のFさんと一人住まいしている知的障害のあるGさんとその支援サービスをしているHさん】 特にFさんにはパワーポイントPPを使って、 青年学級で話をしてもらった。 Fさん「親に世界・社会はかわっていることを伝えていかなくてはいけない。お出迎え・食事つくり・買物・洗い物・お金の計算・洗濯・ゴミ出し・掃除等の介助を利用して一人住まいをしている知的障害者の例をPPで 親の変化の様子も含めて紹介。介護保険制度・生活保護・家探し制度等の利用も」。 Hさん「例えばこの近くの東九条にある公団で約7年暮らしているGさんは二つの団体(JCILとピープルファウスト)からほぼ15人のヘルパーさんと付き合っている。朝と夜寝るまで、応援する人・話を聞いてくれる人・一緒に考えてくれる人・まわりに一ぱいいる」。
学級メンバーの支援学校同窓生でGH暮らし・一人暮らしを経験している人が食事つくりに参加して言ったこと「前者GHは話し相手がいるが自由度が制限される、後者は食事・生活が乱れる・金銭管理をしっかりしないといけない等」。
メンバーの一人からは「将来は結婚もしたいし子供ほしい」という意見があった。
3.むすびにっかえてー我が国の現実
実例①グループホームから一人住まいした人達が続かない要因
2019年に設立された東京都内の「連携型グループホームGH」を利用したあと、13人が一人住まいをしたが、2023年1月現在一人住まいを続けているのは2人だけである。この連携型GHは、これまでのGHにおける生活支援(金銭の使い方・掃除・洗濯・食事つくり・入浴・就寝等)に加えて、買物同行・投薬権・住宅確保の支援を行う。さらにGH退去後 三年間の一定期間のみそのGHが相談支援も行う。 2人だけになってしまった要因は期間制限ためであり、制限なしの持続的な支援体制制度が必要不可欠であると このGH事業者は言っている2)。しかし厚労省にはこれを実行する制度がない。
実例②一人住まい公営住宅探しに公制度の規則がネック
京都市は 障害者が市営住宅利用を応募するのに 当事者単独では受け付けないというう規則を設けている3)。合理的配慮のない 大きな排除の壁となっている。このための支援者体制を市が確立するのも公の当然の気が付くべき仕事である。居住場の保障は基本的人権の最も重要な一つであることが憲法に明記されている。
実例③知的障害者が子育てする居住場がない
当事者夫婦が利用しているGH事業者から「支援の手が足りないので不妊選択可」と言われた4)。厚労省は「GHに子育て支援制度はない。ニーズがない」と。2014年に我が国が批准した「障害者権利条約」に家族をもつ権利が明記されているにもかかわらず。知っていても能動的先駆的な仕事はしないということでしょうか。
開拓者はいつも民間からが我が国か。20年前から当事者46組に子育て支援を、持ち出しで行っているGHがある4)。なぜ厚労省は無視するのでしょうか。わが国の憲法には マイノリティーを含むすべての人に対して 基本的人権が保障されている。国際人権規約も批准している。それ故公機関は人権保障を実現することが本務であり法律・制度・経済的支援を行うことが仕事である。個人の気持ちで解決できない状況に対し 業務を果たすことが第一である。検討していると言うことで何も実行しないのではなく。聞き流す力・美辞麗句な言葉のみでNo実行力・選挙投票選別力があるのみでNo人権保障力・Noイマジネイション力の政治家であるかどうか見極めることが重要である。
人権保障を使命とする公務員・政治家が増えること切に願う。
参考文献 1)山下幹雄「親が亡くなったぼくはどこで暮らしたらいいんや」、ぶどう社、2021年6月。成人障害者地域生活研究会 https://204xsimu51.com 2)朝日新聞朝刊2023年1月6日に追記 3)京都市2022年4月 4)朝日新聞、2022年12月30日朝刊に追記